導入事例  
福山地方卸売市場・福山中央水産 ※みなと新聞 2022年10月18日掲載

元気印の卸訪問(1)
~ITで業務改革~

福山中央水産(笹田博之社長)は、広島県福山市の流通拠点、福山地方卸売市場の水産物卸売会社として1971年に創業。備後地区一円の量販店や鮮魚小売店などへ水産物を供給する。創業から半世紀たち、昨年、東新システムの提供する水産卸向け販売管理システム「いちばクラウド魚市場」を導入した。水帳(売上帳)の手書き作業の軽減、仕切書・納品書の自動ファクス送信、買掛・支払業務のシステム化などにより、業務時間が飛躍的に短縮。さらに過去データや営業実績を自在に活用できるようになり、管理の精度も向上した。今後も同システムを活用した業務の拡張を目指している。

瀬戸内海の鮮魚を仲卸や業務筋向けに販売。
SWやBOとも連携し、業務の多角化を図る。


福山中央水産は、瀬戸内海の前浜で獲れるマダイ、ヒラメ、チヌ、エビ類の他、サーモンなど需要の高い鮮魚を集荷し仲卸や業務筋向けに販売している。卸売業だけでなく、シーフーズウィッシュ(以下SW)とブルーオーシャンホールディングス(以下BO)の2つの関連会社と連携。SWでは、原料を切り身などに加工し学校給食や冠婚葬祭事業社、老健施設などへ納品。

一方、BOではサヨリなど前浜の魚をフィレー加工し全国の卸売市場へ出荷する。この地区で水揚げされるネブト(テンジクダイ)の頭取りも手作業で行っている。同社では養殖魚のフィレー加工や量販店の委託加工など、取引先からの1次加工処理を業務の主軸と位置付けている。

ベンダと連携し、従来システムを「魚市場」に。
笹田社長を筆頭に新システム構築への挑戦がスタート。


同社では、約30年前から業務管理システムを独自に開発、運用してきた。冷凍塩干の買い付け販売の管理からスタートし、委託販売業務まで順次構築してきたが、経費部門の買掛・支払業務が手作業で残っていた。また水産品独特の複雑な商品規格を独自にコード化、これを営業担当者が水帳に記入する業務が熟練を要し、他部門の業務を手伝えないなど負荷となっていた。旧システム(オフコン)の保守切れ・製造終了を機に、従来システムのベンダの協力の下、専門パッケージの導入を決断、業務改善に向けた取り組みを開始した。

いちばクラウド魚市場は、水産卸の業務効率化を目的とした専門のパッケージシステム・サービス。委託販売の仕組みを中心に、多様化する卸業務全般への柔軟な対応が可能だ。2020年11月、同システムの採用を決定し、笹田社長のリーダーシップの下、企画情報システム室長の立花昌大鮮魚部部長と執行役員の三好晋営業副本部長が全社のけん引役となって、新システム構築への挑戦を開始。丁寧に時間をかけて業務を分析・設計し、21年9月に稼働へこぎ着けた。デスクトップパソコン10台、伝票出力と合計請求書出力用のレーザープリンター3台を運用する。

運用開始後、属人性軽減と業務精度向上を実現。
手作業によるミスがなくなり、心理的負担も軽減。


運転開始後、各部門では業務改善の実感が得られている様子。営業部門では、従来8桁もの商品コードを覚えて水帳に記入する必要があったが、新システムではコードも簡素化、また商品名で検索が行えるため営業担当者の負荷が軽減。業務精度の向上と属人性の解消へつながった。

経理部門では、システム化により2人の事務員の業務が7~8割も削減、手作業によるミスがなくなったことで心理的な負担も軽減した。電算部門が荷主・顧客へ手送信していたファクス処理も自動化。全社業務で、1日1時間以上の労働短縮を実現した。

立花部長は「システムが変わり、画面の項目順やレイアウトも変わるがすぐに慣れた」と抵抗がない様子。自身は水帳への事前記入を廃止、直接システムを入力する運用で、使いこなしている。

データなどの情報を活用した積極営業を提案。
今後、システムのフル活用で、業務効率はさらに向上。


地方の多くの水産卸を取り巻く環境は必ずしも順風とはいえない。それでも、福山中央水産ではいちばクラウド魚市場を武器に新たな戦略を見据えている。笹田社長は「データを活用して、昨年の購入実績などをもとにお客さまへ積極的に提案をしていきたい」と抱負を述べた。立花部長は「営業担当者が休むなど不在でも、システムの情報を活用して業務を補うことができる」と話し、顧客へのサービスも向上している。

今後、立花部長のようにシステムをフル活用できる社員が増えていけば、業務効率はさらに向上する。昨年に創業50年を迎えた福山中央水産は、次の50年に向け進化を続けていく。