導入事例  
柏市場・山形屋 ※みなと新聞 2022年1月28日掲載

元気印の仲卸訪問(10)
~ITで業務改革~

千葉県柏市民の台所として日々の食を支えている柏市公設総合地方卸売市場。同市場仲卸の山形屋(岡田正光社長)はマグロを専門に取り扱い、スーパーや個人経営の飲食店などに販路を持つ。同社は2018年、業務のシステム化を決断。東新システムの提供する水産仲卸向け販売管理システム「いちばクラウド魚問屋」を導入、手作業での業務から、全面的なシステム化を実現した。店舗での販売時その場で伝票を発行して顧客に渡す「帳場くん」機能などをフルに活用し、大幅な業務の効率化を達成している。

顧客からの細やかな注文に幅広く対応。
それだけに大量の伝票などの作業効率改善が課題だった。


山形屋の創業は1999年で従業員は6人。生鮮や冷凍を問わず、ミナミマグロを中心にクロマグロやメバチマグロ、カジキマグロをそろえる。柏市場に上場しない種類のマグロは豊洲市場(東京都江東区)や仙台市中央卸売市場の仲卸から積極的に仕入れ、「顧客からの注文に応じてキハダやビンナガも用意できる」(同社柏店の三木博人店長)など、顧客からの細やかな注文に幅広く対応できる点も強みだ。現在は柏市や茨城県、埼玉県のスーパー5社や個人経営の寿司店、居酒屋など幅広い顧客を持つ。

同社はいちばクラウド魚問屋の導入前、納品書や各種伝票、請求書、売掛の帳面などを店舗内の帳場(現場事務所)で手書き作成していた。しかし、年末年始など連休時には作成枚数も大量になり、担当者は休日出勤して対応する必要があるなど、作業効率の改善が大きな課題だった。

「魚問屋」の導入後、作業時間は10分の1までに短縮。
従業員の働き方改革も実現できた。


いちばクラウド魚問屋は、水産仲卸に特有な業務の効率化を目的としたパッケージシステム・サービス。売掛、買掛管理から品目ごとの数合わせ(品合わせ)・損益管理、帳場での売り上げ入力や伝票発行処理に対応する。山形屋はデスクトップパソコン1台、伝票出力用にドットプリンター1台、合計請求書出力用にレーザープリンター1台を運用、ボタン一つで伝票や請求書、さまざまな管理資料が発行できる機能を活用する。

パソコンに慣れた従業員が少なく、最初は少し苦労もしたが、担当システムエンジニア(SE)のサポートで軌道に乗り、業務効率は大きく改善した。三木店長は「忙しい朝の時間帯でも、パソコンを操作するだけで簡単に産地も表示されたきれいな納品書が印刷できる。計算ミスもなくなり、作業時間は導入前の10分の1まで短縮できた」と振り返る。また、導入前は締日・月末の請求書の作成作業に1時間~1時間半ほど要していたが、システム導入後は約30分に短縮、従業員の働き方改革も実現した。

納品書の自動FAX機能も活躍している。顧客への価格連絡業務を大幅に軽減し、送信ミスも防止できる。三木店長は「ワンタッチで何十件もの顧客に同時に送信でき、一度覚えてしまえば本当に楽」と高く評価している。

「魚問屋」で業務の効率化を進めつつ
ウィズコロナ時代の販売を模索していく。


昨年来の新型コロナウイルス禍では、山形屋も大きな打撃を受けた。21年は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令を受けて飲食店が休業を余儀なくされ、同社の売り上げは例年の5割減となるほど大きく落ち込んだ。

宣言の解除後は業務筋からの注文も徐々に回復している一方、宴会需要の消失などが要因で、三木店長は「(通常時の)7~8割ほど(の回復)がいいところ」と話す。目下では新型コロナ変異株「オミクロン株」の行方が見通せない状況だ。

厳しい状況が続く中、同社は今後も引き続き顧客のニーズに応えた販売に注力していく方針だ。いちばクラウド魚問屋で業務の効率化を進めつつ、状況を見極めながらウィズコロナ時代の販売を模索していく。