導入事例
横浜市中央卸売市場・伊之助商店 ※農経新聞 2021年2月1日掲載


次世代へ生き残り図る青果仲卸(8)

~攻めの経営を支える管理基盤~

青果仲卸は、営業拡大や組織づくり、人材育成などの課題が山積し、さらに卸売市場制度の改正でますます厳しい状況に置かれている。本稿では将来に向かって企業努力で生き残りを図る青果仲卸、およびそれをバックアップする東新システムの販売管理システム「いちばクラウド青果問屋」を紹介する。

飲食店経営で培ったシビアな利益管理の
経験をもって、計数管理の確立をめざした。


横浜市中央卸売市場(本場)の伊之助商店(鈴木光平社長)は、業務用納品を中心に、小売商対応などを行う。定評ある神奈川県三浦半島の特産「三浦野菜」を、さらに厳選して顧客に提供するなどの機能が好評だ。

しかし、以前は運営に悩みがあった。1990年初期のバブル経済崩壊後もスーパーなどへの拡大路線を続けていたため、売上高こそ伸びたものの計数管理が不十分だったという。

鈴木社長は3代目に当たるが、元々飲食店を経営していた。その後2007年に同社に入社し、13年の社長就任まで6年間、営業を担当しながら会社全体を観察。飲食業界で組織づくりとシビアな利益管理を追求してきただけに、「目に付くところは多かった」と振返る。

社内の意識・体制もまだ不十分で、数字の把握が遅かった。組合システムを活用し、ロット別の厳密な管理は行なっていたが、日報の確認が翌日、月報の確認も月末から数日遅れるなどの状況となっていた。

伝票整理に拘束される時間が長い。
これが改善できれば人材の確保にもつながる。


もうひとつ、大きな問題があった。担当者の業務拘束時間が長いことだ。同社では、組合システムから出力される商品のロット別の伝票(「販売票」)を利用している。これを現場のパレットに積んだ「山」に差しておき、売上げごとに顧客名・数量を記入していく。顧客に見える状態で現場に置いてある伝票なので、当然単価を記入することはできない。

担当者は、事務所に上がってから、この伝票に単価を記入しなければならない。この作業に2時間、担当の品目によってはさらに多くの時間がかかってしまう。

担当者が伝票整理に拘束されるこの時間を何とかしたい。プライベートの時間も圧迫され、休むこともままならない。「外の世界」を経験してきただけに、切実に感じられた。ここが改善できれば、人材の確保もずっとしやすくなるはずだ―これが、鈴木社長の思いだった。

売上げや利益管理をリアルタイムで把握。
さらに前日の目標達成率を確認してから販売にあたる。


「いちばクラウド青果問屋」システム導入のきっかけは、16年9月に同市場で行われた東新システム社の展示会。翌年から打合せを開始し、じっくり時間をかけて運用や設計を煮詰め、18年春から運用開始した。

横浜市場では、仲卸組合が中心となり、買受人マスタや商品マスタなどを一元管理。代払請求業務だけでなく、荷受からの分荷データや仕入請求データを連携し、各組合員仲卸の業務管理システムを運営している。在庫管理は、ロット別の在庫引当てを行う、厳密な形態だ。新システム導入にあたっては、この管理形態を継承し、組合システムと密に連携しつつ、これを補強するような形でシステムを構築、業務の改善を図っている。

従来4、5人いた事務員も、現在では2人でまわせるようになり、1名は現場での販売のサポートまでするようになった。業務の終了も早くなっている。そして何よりも、売上げや利益管理がリアルタイムで把握できるようになった。営業員は毎日出社時に、前日の売上げや利益、さらに目標達成率などを確認してから販売にあたることができるようになった。

担当者の馴れ、ITスキルの向上などを見ながら
理想の流れをつくっていきたい。


実は、まだ鈴木社長の描く理想の流れには届いていない。現在の商品ロット別の「販売票」の代わりに、得意先別に売上げを起票していく流れに変更すれば、事務所に上がってから単価を記入する作業を一掃できる。

さらに、タブレットを現場に持ち込み、その場で売りを立てていくことができるようにすれば、まさにリアルタイムの業務把握が可能。今日、その瞬間までの売上げや粗利が常に分かる状態となり、「『今日は、あといくら売らなければ』と意識することができる」(鈴木社長)。担当者の馴れ、ITスキルの向上などを見ながら、順次取組みたい考えだ。