導入事例
東京大田市場
協同組合大田市場二十一
※農経新聞 2021年1月25日掲載


次世代へ生き残り図る青果仲卸(7)

~攻めの経営を支える管理基盤~

青果仲卸は、営業拡大や組織づくり、人材育成などの課題が山積し、さらに卸売市場制度の改正でますます厳しい状況に置かれている。本稿では将来に向かって企業努力で生き残りを図る青果仲卸、およびそれをバックアップする東新システムの販売管理システム「いちばクラウド青果問屋」を紹介する。

組合システムを一新。
クラウド対応でオンライン化。


東京・大田市場の青果仲卸組合である協同組合大田市場二十一(小島公平理事長、組合員13社)は、2000年の設立という後発組合。従来の古い価値観にとらわれず、新しい仲卸経営のあり方を創造してゆくというスタンスを共有する9社で発足した。発足以降は効率的な組合運営により、完納奨励金の大半を組合員に戻している。

しかし、組合員の請求・仕入れデータをまとめる代受代払いシステムは課題を抱えていた。以前よりあるシステムに修正を加えながら運用してきた旧システムは、メーカーにも構造を把握している担当者がいなくなってしまった。サポートやメンテナンスも困難になる中、2019年10月からの消費税軽減税率導入にあたっては、改修費用が大きく膨らんだ上、そもそも間に合わない可能性もあった。このため、19年春から新たなシステムの導入を検討した。

同組合が「いちばクラウド」システムを選定した理由はいくつかある。まずは市場業務に精通し、組合システムの実績があったこと。もうひとつは、データ喪失などの心配の少ないクラウド型サービスであったことだ。

組合システムは、大きな金額を動かす市場の心臓部とも言える処理。万が一のシステム障害で、処理が止まってしまうと、大変なことになってしまう。そして、予算に見合った適正な金額での提案であったことが、決め手となった。

抜本的な業務改善と機能強化。
組合と組合員をクラウド上で結ぶ。


導入に際しては、単に軽減税率に対応するだけでなく、抜本的な業務改善と機能強化を盛込んだ。まずは、組合と組合員をクラウド上で結び、これまでUSBメモリの手渡しとなっていた組合員との代払・代受データのやりとりをオンライン化。産地表示などに対応した最新のレイアウトをスムーズに統合する。

また、これらの基盤整備を通して、現在発行している多数の書類の電子化・ペーパーレス化へ向けた整備、将来の相場情報の提供や需要予測サービスなどへの準備を進める。今後必要となるインボイス制度への対応も準備する。

そして複雑な組合業務を整理、標準化して、シンプルな操作でミスなく運用できるようにすることも課題とした。その先進性と組合員仲卸の業務効率化と競争力強化への貢献が評価され、東京都の市場活性化支援事業にも採択された。

想定したよりも大変だった導入作業。
手がかりとなったのはベテラン作成の「マニュアル」。


ただ実際の導入作業は、想定したよりも大変だった。代受・代払の双方向の処理、事故受付処理、完納奨励金算出、銀行への口座振替依頼書の出力、大田市場の代払処理を取りまとめる情報処理センターや卸各社との各種のデータ交換などを含む同組合の業務は、非常に複雑であった上、仕様書なども整ってはいなかった。

ここで、大きな手がかりとなったのが、同組合のベテラン事務員の武田さんが長い時間をかけてまとめた分厚い「運用マニュアル」だ。これは、組合の業務とシステムの運用を詳細に整理したもので、設計作業はまずこの「マニュアル」を読み解くことから始まったという。

軽減税率の施行に合わせ無事本稼働。
打ち合わせの段階からスムーズに進行。


大田市場における軽減税率対応に関しては、情報処理センターを中心とした検討会議で仕様が決定されていった。これらの検討と並行して設計・開発を進め、同組合では軽減税率導入に合わせ、無事に新システムを稼働することができた。

代払請求データを持ち込むためには、今まではUSBを持ってこなければならなかったが、新システムでは各組合員の事務所から直接送信が可能となった。また、値書データ・仕入れデータについても、オンラインでの取込みが可能となった。

組合の業務運用操作もすっきりと簡素化され、武田さんも「操作がわかりやすくなった」と評価する。小島理事長は「市場のことを分かってくれているので、打合せの段階からスムーズに進めることができた」と話す。