導入事例
東京淀橋市場・和政 ※農経新聞 2021年10月11日掲載


次世代へ生き残り図る青果仲卸(10)

~攻めの経営を支える管理基盤~

青果仲卸は、営業拡大や組織づくり、人材育成などの課題が山積し、さらに卸売市場制度の改正でますます厳しい状況に置かれている。本稿では将来に向かって企業努力で生き残りを図る青果仲卸、およびそれをバックアップする東新システムの販売管理システム「いちばクラウド青果問屋」を紹介する。

2019年、軽減税率対応のため「青果問屋」を導入。
仲卸組合向けの代払い請求システムの導入を計画。


東京・淀橋市場の和政(和田政利社長、わまさ)は、1939年の同市場の開場とともに青果仲卸として営業を開始した。スーパーや納入業者、青果商などに野菜・果物を供給し、近年は同業仲卸のパック加工の代行も増えている。

取引や商品管理の透明化と業務効率化などを目的に、30年ほど前から販売管理システムを導入。使い勝手や性能に磨きをかけてきたが、システム業者の事業撤退と軽減税率への対応のため、2019年に東新システムの「いちばクラウド青果問屋」を導入した。売掛・買掛管理、代払請求、在庫管理に活用している。とくに在庫管理では、管理精度が高いが、まだまだ運用例の少ない、ロット別在庫管理を行う。

和田社長は同市場の仲卸組合の理事で、システム担当でもある。市場仲卸業務の強化と顧客サービスの向上を目指して、東新システムの代払い請求システムの導入を計画する。

日々のデータの積重ねが「信頼」や「透明性」を担保。
トレーサビリティや鮮度管理にもつながる。


和田社長が業務を行ううえで大切にしているのは「信頼」や「透明性」だ。そのため、自身では15年以上前に「食品衛生管理者」の国家資格を取得。4人の社員にも同資格を取得させ、顧客に食品衛生や食に関するルールについてアドバイスできるよう努めている。

信頼や透明性を担保するのは、日々のデータの積重ねでもある。仕入れと売上げを毎日確定させるとともに、在庫状況も把握。ロット別在庫管理は産地・規格・日付の異なる仕入れの一行一行を独立の在庫として管理するもので、売上げの明細と紐づけ、引当てることで、販売先ごとの損益が管理できるだけでなく、トレーサビリティや鮮度管理にもつながる。そのため、「万が一、販売先とのトラブルがあった場合にも、迅速に遡って対応することが可能」(和田社長)という。

在庫表には「滞留期限日数」欄を導入。各ロット在庫に対して仕入日からの経過状況を可視化し、2週間まで対応。取扱商品は生鮮青果物のため実際にはこれほど長く在庫を持たないが、廃棄の目安となるとともに、「仕入数量をごまかす」などの不正ができないしくみとなっている。

視野にあるのは「複数の仲卸で同一のシステムを使用」。
来たるインボイス制度にも対応しペーパーレスを推進。


淀橋市場の仲卸は15社あるが、システム導入状況はまちまち。今、和田社長の視野にあるのは「複数の仲卸で同一のシステムを使用する」こと。各仲卸の導入費用が割安となるうえ、自社が災害や盗難などに遭った際に「同じシステムを導入する他社のパソコンを使わせてもらうことができる」メリットがある。その延長線上で「複数社で事務所とパソコンを共同利用し、各社タブレットで作業できるようにすれば、空き時間を活用して業務を進めることもでき、働く環境の改善とともに大幅な経費削減ができる」といい、「東新システムに相談中」と明かす。

また、買参人への請求書・納品書の発行は卸の東京新宿ベジフルが代行しているが、今後は「自前」で行う。現在は紙ベースのため、買参人は組合事務所に行かないと受取ることができないが、今後はPDFやCSVファイルなどのデータでも受取ることができるようにする。漢字での商品名の表示、これまでは「摘要」として処理されていた産地・等階級に専用の欄を持たせるなど、最新の設計に対応。2年後に迫るインボイス制度にも対応し、ペーパーレスを推進する。東新システムとともに取組みを進め、年内にもシステムを導入する計画だ。