次世代へ生き残り図る青果仲卸(11)
~攻めの経営を支える管理基盤~
青果仲卸は、営業拡大や組織づくり、人材育成などの課題が山積し、さらに卸売市場制度の改正でますます厳しい状況に置かれている。本稿では将来に向かって企業努力で生き残りを図る青果仲卸、およびそれをバックアップする東新システムの販売管理システム「いちばクラウド青果問屋」を紹介する。
タブレットの活用でペーパーレスを実現。 めざしているのは“幸せを提供する”青果流通。
東京・北足立市場の千権(國井孝嗣社長、年商12億円、スタッフ25人)では、2003年6月から東新システムの青果問屋を導入している。14年4月からはクラウド型の「いちばクラウド青果問屋」にリニューアルした。現在は営業員7人全員がiPadを活用。量販店対応を脱却し、「小売店舗の運営ビジネス」への転換にも活かしている。
iPadの導入は國井社長の提案による。それまでは、営業員が手書きでメモ→伝票に転記清書→事務員が入力、という手順が必用だった。その作業そのものに時間がかかるだけではない。ミスも多く、チェック作業が必要となり、間違いがあった場合には確認作業や「責任の追及」にさらに多くの時間が必要に。
また手作業に依存する分、「わかる人がいなければ回らない」、つまり業務ごとに特定の人に依存するような状況に陥りつつあった。
奇しくも“変革期”にあたり、社員も積極的に対応。 データの共有を徹底し、業務を3時間も短縮。
「営業員が自分自身で入力できるシステムを導入すれば、この状況を解決できる」と考えた國井社長は、iPadを活用したシステムの開発を東新システムに依頼した。
当初は慣れない社員もいたが、奇しくもその時期は「会社の変革期」にあたっていたため、社員も積極的に対応。現在では一連の業務が3時間も短縮されたうえ、ペーパーレスでの業務運用を実現している。全ての情報をiPad上で共有し、情報の照会やチェックのためだけの紙の出力は廃止、納品書も自動FAX機能を活用して直接送信。事務員もiPadを活用し、事務所にはパソコンが1台あるだけの状態だ。用紙やトナーなどのコスト削減の他、パソコン・プリンタなどの機器の投資も最小限に抑えられている。
廃棄することなく鮮度のよい野菜を消費者へ。
その考えはSDGsとも通底する。
iPadを活用した販売管理システムの刷新は、「変革期」にあった同社のビジネスモデル転換を後押しした。売上げ(当時30億円)が落ちることは覚悟で、赤字続きだった量販店との取引は打切り、15年にMongTeng(モンテン、千葉市美浜区)と連携して立ち上げた青果中心の小売店「Una casita」(おなかすいた)16店舗への納入に特化したのだ。
大手スーパーは、価格や数量を守ろうとする。これに合わせて仲卸も、豊作で美味しい野菜がたくさん取れると、値が崩れるため冷蔵庫に買い溜めして、鮮度を落とす。消費者に届くのは、わざわざ鮮度を落とした野菜だ。薄利で苦労しても、だれも喜ばない。國井社長は先代から会社を引継いだ頃から、「生産者から消費者の口元までの一連の流れを変えないといけない」と考え続けてきた。採った野菜を廃棄するようなことをなくし、よいもの美味しいものを、鮮度よく、安く、消費者に提供したい。今、日本でも大きく取り上げられるようになったSDGsにつながる考え方だ。
売場に仲卸の機能をストレートに反映。 新システムが業務スピードを加速。
「Una casita」への納入では、販売する品目、小売価格、パッケージ形態、数量などはすべて千権が決定、コントロール。千権では本部のモニターで全店舗の売行きや客層をチェックするとともに、レジを通過した販売情報もリアルタイムで把握。これを基に商品追加、売場変更などを指示する。
また、いわば「自社の小売店舗」であるため、返品対応や優越的地位の濫用に悩む必要がない。新システムが業務のスピードを上げ、仕入の情報を素早く店舗に反映できるようになったことにより、「小売店舗に仲卸の機能をストレートに反映させる」(國井社長)仕組みを実現した。
そして國井社長は「IT技術は猛スピードで進歩していく。今後もしっかりついていきたい」としている。
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