導入事例  
横浜市場本場・横浜大政 ※みなと新聞 2021年1月18日掲載

元気印の仲卸訪問(6)
~ITで業務改革~

「ハマの台所」として関東屈指の取扱高を誇る横浜市中央卸売市場本場(横浜市)。横浜大政(木村英二社長)は同市場で冷凍魚や貝類を販売する水産仲卸だ。東新システムの「いちばクラウド魚問屋」を活用、完全ロット別の在庫管理、店舗での伝票発行処理など、「働き方改革」につながる大きな業務改善効果を発揮している。

2006年、働き方改革に先駆け、業務効率の改善と
従業員の負担の軽減をめざして導入を決断。


横浜大政はギンダラなどの冷凍魚をメインにカニ、エビ、イクラやタラコなどの魚卵、生鮮貝類を取り扱う。主な仕向け先は量販店や鮮魚小売店。顧客の品ぞろえを支えるため、「大衆魚など鮮魚を仕入れることもある」(木村社長)。

営業職、事務職を入れて5人体勢で運営する同社が、新システムを導入したのは2006年。近年になって働き方改革が叫ばれるようになったが、業務効率の改善と従業員の負担の軽減を目指して、先代の社長が決断した。

現在は店舗と事務所に1台ずつ端末を配置し、売り上げ管理・請求書発行、仕入れ管理に加え、日々の担当別・品目別の損益管理を運用。

新システムの導入により、現在では
午前中に全業務を終了できるようになった。


目玉は、帳場(店舗事務所)での伝票発行対応だ。店舗に設置したパソコンで、販売と同時にリアルタイムでデータを入力し、来店顧客にその場で伝票を渡す。店舗営業の終了時には、売り上げの入力が終了している状態で、大幅な業務改善に直結する。

また冷凍品の場合、品目や規格が非常に多く、顧客ごとの単価の管理が重要になる。以前はこれらを手書きのノートで管理していたが、新システムでは顧客ごとの売価を自動的に学習管理してくれる。さらに、過去の販売履歴なども簡単に検索できるため、経理事務を担当する吉川成江さんは「1年前のデータでも紙をひっくり返さずに確認できるので、ずいぶん楽になった」と振り返る。これらにより、現在では昼前には全業務が終了できるようになった。

同社独自の高度な「完全ロット管理」にも
カスタマイズによりしっかり対応。


「いちばクラウド魚問屋」は、市場専用の販売管理システム。水産に特化したフルラインの機能を備え、全国にユーザを持つ。強力な在庫管理機能が特徴の一つだ。

横浜大政では、すべての在庫を日付別に管理する「完全ロット管理」を行っている。仲卸ではなかなか難しい高度な管理形態だ。しかも同社では売り上げと独立して引き落としを行う独自の運用であったが、「カスタマイズによりしっかり対応してくれた」(吉川さん)。しかも「前のシステムより安価に導入できた」(木村社長)という。

現在では、吉川さんが作成した簡単な運用マニュアルで誰でも業務管理が可能。急きょスタッフが欠けても困らない体制を構築できた。以前のシステムでは導入後サポート体制が悪化し、苦労した同社だが、新システムでは手厚いサポート体制に助けられている。

このコロナ禍も、これまでと同様の
丁寧な販売ときめ細かな管理で乗り切る。


コロナ禍で卸売市場も苦しんでいる。見通しが立てにくい中ではあるが、木村社長は「何か特別なことをするのではなく、これまでと同様、お客さまに合わせた丁寧な販売ときめ細かな損益管理で、しっかり乗り切っていきたい」と話す。