導入事例  
札幌市場・入福福田商店 ※みなと新聞 2021年5月17日掲載

元気印の仲卸訪問(7)
~ITで業務改革~

札幌市中央卸売市場は、同市と周辺を合わせた札幌圏の人口約250万人に生鮮食料品を供給する役割を担う。また北海道産水産物が集積し、全国に供給する集散機能もある。同市場仲卸の入福福田商店(福田龍介社長)は、仲卸向けの販売管理システムを提供する東新システムの「いちばクラウド魚問屋」を2019年に導入。多岐にわたる取扱品目や取引先を抱える入福福田商店の業務効率化、従業員の働き方改革に寄与している。

先進システムが老舗を改革。
従進む業務効率化・働き方改革。


同社は1914(大正3)年、道南部の松前で創業。海産物などの北海産品を運んだ交易船・北前船の発着の地で、海産物問屋・加工を生業とした。のちに道内で揚がる秋サケを大量に買い付け、新巻きサケに加工。旧築地市場卸に供給するなど業容を拡大。60年の札幌市場開場と同時に仲卸として入場し、道の開拓と札幌市場の歴史とともに歩んできた老舗・魚問屋だ。

従業員は42人。営業部門は魚卵鮮魚部(魚卵課・鮮魚課)、鮭鱒冷凍部(鮭鱒課・冷凍課)、製品塩干部(製品課・塩干課)、販売促進部(販促課)の4部7課体制。道内大手量販店を中心に業務筋や飲食店、道内外市場や商社、加工メーカーとも取引し、同市場仲卸でも売り上げ上位に挙げられる。

同社が「いちばクラウド魚問屋」を導入したのは2019年10月。消費税の10%への引き上げに伴う軽減税率導入がきっかけ。「旧システムの変更で対応することもできたが、将来を見据えて東新システムのクラウドサービスを導入することにした」と福田真士常務。

現在、端末として本社事務所にデスクトップパソコン6台、タブレット8台を運用。端末はクラウドデータセンターとつながり、多彩な機能を利用する。

タブレット活用で在庫管理も容易。
テレワークの効果を生み、感染予防にも役立っている。


仲卸業は、卸売場や帳場(店舗)など現場での仕事が基本。営業担当は商品を運んだり、店舗で接客や商談に追われる。合間に携帯電話で受注や仕入れを行うことも多い。
「旧システムでは注文をメモに手控え。事務所に戻って売上原票を起こし、電算室で入力を行っていた。売り上げを立てるまで数人の手を介した。一つの段階で業務が滞るとどんどん遅れてしまった」(福田常務)。
かつて12月の年末繁忙期は、電算室の打ち込み係の退社が深夜になることもあったという。

システム導入後は本社のPC、タブレットでは市場や出張先などの出先でも仕入れ・販売を完結でき、在庫管理も容易に。3人いた電算室の人員は今は2人になったが、「12月も昼には入力作業が終わる」(同)。さらに、タブレットはテレワークの効果を生み、新型コロナウイルス感染予防にも役立っている。

新システムでは、管理精度の向上と同時に
働き方改革にもつながる業務負荷の軽減を実現。


同社のシステムの特長は、高度なロット別の在庫管理を運用していることだ。仕入れの1行1行を独立の在庫として引き当てするため、管理負荷は高いが、①取引先別の損益管理②トレーサビリティ③在庫の鮮度管理が実現できる。

札幌市場では、07年の市場再整備に合わせて、市場内の情報通信システムが整備されており、午前9時~10時という早い時間帯に、精度の高い仕入れ情報を荷受会社から受信できる。このデータを活用してロット管理を実現しているのだ。

さらに新システムでは、量販店との受発注業務に利用している電子データ交換(EDI)システムから、受注データの取り込みにも対応。これらを活用し、管理精度の向上と同時に、働き方改革にもつながる業務負荷の軽減を実現した。

このシステムを活用して
もっとさまざまなことができるようになれば。


昨年来、新型コロナウイルス感染症の拡大で荒波の中にある水産物流通。飲食店などへの休業や営業時短要請、人が大勢集まる会食機会の減少で、同社も業務筋や飲食店向けの販売減少に直面する。一方で内食需要の高まりで量販店などの販売は伸長し、堅調な業績をキープできている。

「コロナ禍を機にITの進化は加速すると思う。水産物生産・流通の現場は人手不足が慢性化している。人工知能(AI)、モノのインターネット(I o T)などの技術を活用して、限られた人材で企業として最大限のパフォーマンスを発揮する必要に迫られている。このシステムを活用してもっとさまざまなことができるようになれば」(同)と、今後に期待を寄せている。