導入事例  
豊洲市場・伊勢慶商店 ※みなと新聞 2021年10月5日掲載

元気印の仲卸訪問(9)
~ITで業務改革~

豊洲市場(東京都江東区)仲卸の伊勢慶商店(木津恵輝社長)は冷凍のエビやカニ、イクラなどの取り扱いに強みを持つ、創業121年の老舗仲卸だ。2015年から業務効率の改善を目的に、東新システムの提供する水産仲卸向け販売管理システム「いちばクラウド魚問屋」を導入。冷蔵倉庫内の在庫を一括で把握・管理できる機能をはじめ、商品ごとの売り上げ・仕入れ・棚卸し・損益を瞬時に把握できる機能などをフル活用し、業務効率化や顧客への提案型販売を展開する。

フルに揃った機能の中から、「買掛管理」「売掛管理」「店舗売上処理」
「商品管理」「冷蔵庫在庫管理」などを導入して業務改革。


伊勢慶商店は1900(明治33)年、江戸の台所として栄えた日本橋魚河岸で創業した。干物の卸売業を営み、23年に築地市場に移転。99年からは冷凍商材中心の卸売業を開始した。

イクラやモンコウイカを扱う冷凍魚部門、タラバガニやズワイガニを扱う蟹部門、バナメイやブラックタイガーなど輸入エビ全般を扱う冷凍海老部門を設ける。取り扱う商材の品質など在庫管理を徹底し、顧客のニーズに応えて常に新しい商材を提案できることを強みとしている。

いちばクラウド魚問屋の導入前は他社の販売管理システムを導入していたが、在庫や仕入れ数、販売金額などの数字が合わないことやデータのバックアップに時間を要することが運用上での課題だった。過去の販売品目や販売数などの記録を確認するのにも時間がかかり、作業効率の改善も急務だった。

いちばクラウド魚問屋は、現場処理から受注業務、管理帳票まで、市場業務に必要な機能をフルラインで装備した専用システム。同社はそのうち買掛管理や売掛管理(請求業務)、店舗売上処理(帳場くん)、在庫や利益の商品管理、冷蔵庫在庫管理の機能を導入して業務改革に役立てている。

日々の業務に「魚問屋」をフル活用。
タブレット入力は作業を効率化し、ミスを防止。


受注から在庫管理、請求書発行など、日々の業務にいちばクラウド魚問屋をフル活用する。営業担当者は顧客からの注文を受けた後、商材の品目や数量、販売金額を店舗内に備え付けのタブレットから入力すると、データが帳場(店舗内の事務ボックス)のパソコンに共有・表示される。レジ会計時には、タッチ機能で顧客を呼び出すだけで、納品書や領収書を簡単に発行できる

声やメモで注文を帳場に通そうとすると、うまく聞き取れないことや打ち間違いなどのミスが発生する恐れがある。一方、タブレット入力の場合はその心配がなく、作業の効率化やミス防止に一役買っている。

履歴機能を駆使して積極的な販売を実現。
導入前と比較して業務時間を3~4時間ほど短縮。


同システムは、顧客への提案型販売にも活用できる。顧客コードや期間を入力すれば、過去に販売した商材名や販売金額などの履歴が顧客ベースで表示される。「この商品を買い忘れている」「今までよりもっといい商品がある」など、販売履歴を用いた積極的な販売が可能になった。タブレットでは冷蔵倉庫内の在庫も確認でき、在庫の有無など顧客からの質問や要望にも素早く対応できる

タブレットやパソコンでは在庫一覧などを画面上で共有できるため、印刷による確認作業の手間や紙代も大幅に削減できた。商材の入荷や販売、収支も一括で確認でき、売り漏れや計上漏れなども見逃さない。業務効率化で営業担当者は当日中に翌日の出庫を準備できる余裕も出てきたといい、導入前と比較して3~4時間ほど業務時間の短縮につながった。

改善したい業務上の課題を明確にしたうえで
システムを導入することが大切。


取締役経理・総務部長の梶田敬子さんは「改善したい業務上の課題を明確にした上で、システムを導入することが大切」と話す。伊勢慶商店は東新システムと打ち合わせを重ね、販売履歴の検索機能などの業務に欠かせない機能を明確化した上で、効率的にいちばクラウド魚問屋を活用する。

昨年来の新型コロナウイルス感染症の流行で、伊勢慶商店が強みとする対面での営業が難しくなる。そんな中でも、「今後はインターネットでの販売にもチャレンジしたい」(梶田さん)など、いちばクラウド魚問屋を活用したさらなる事業展開にも意欲を見せる。